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藤野ぐるっと陶器市2023 レポート

​平川まんぼう

藤野ぐるっと陶器市は、コロナ禍を経て、全10会場での開催となりました。それぞれに個性や特徴があり、1箇所だけ離れている会場、歩いて行ける距離に複数の会場が集まっているところなど、立地もさまざま。そこで今回は、各会場の特徴や雰囲気、そしておすすめポイントをいくつかご紹介します

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1 酔月庵

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陶器市会場で唯一、駅の北側にある「酔月庵」。県道から奥まった高台に建つ、隠れ家のような古民家です。一箇所だけポツンと離れているので、ここに行くか行くまいか、行くとしたらどのタイミングで行くのかは、お客さんも悩むところではないかと思います。

酔月庵のすぐ横に窯がある地元在住の陶芸家・溝口とみえさんの作品販売とカメラマンでもある石澤義人さんの木工小物、地元野菜の販売などが行なわれています。溝口さんは、いろいろな作風を実験されている作家さんなので、ぜひお気に入りの一点を見つけてみてください。

そしてなにより酔月庵の魅力は、向かいの山々を見渡す絶景と、静かな環境。景色を眺めているだけで、あっというまに時間が過ぎていきます。庭にはイスがたくさん用意されているので、あちこち回って、ここでしばらくひとやすみ。買い物だけでなく、せっかくなのでのんびり里山時間を楽しみたいという方にはぜひ行ってみていただきたいと思います。

一箇所だけ離れていることもあってか、そこまで大混雑することはありませんが、駐車場が少ないので時間帯によっては少し待つこともあります。他会場を回る順番を考えると、どうしても朝一番、もしくはその日の最後に回る人が多いとは思いますが、のんびり過ごしたい方は、少し時間をずらして行ってみるのもオススメです。

 

こんな人におすすめ

・新緑の風景を堪能したい方(絶景です)

・効率より冒険を大切にしたい方(一箇所だけ離れているからこそ、行ってみること自体が楽しい冒険)

・ひとつの会場でゆっくりしたい人(思わずのんびりしたくなる空間で)

工房艸(そう)

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日連地区、細い道を入った先にある工房艸(そう)。布作家の木下純子さんの工房が会場です。すぐ傍に駐車場もありますが、道が細いので、不安な方は手前の道沿いの空き地にも停められます。小道に入ると急に視界が開けて爽快。お散歩するのにも気持ちがいいところです。

出店スペースは広いテラスと、木々が植わったお庭。その木々に仕切られた通路に沿ってテントが並んでいます。手前からは、通路の先に何があるかは見通せません。ただ歩いていくと、お店が奥のほうにいくつか並んでいるのが見えてきます。まるで迷路のよう。意外にも、大人気は地元の方のとれたて野菜の販売。作家さんも毎年常連の方が多いので、目当ての作家さんがいて、買いにくる方も多いようです。どの作家さんもセンスよし。お気に入りの一品に出会えます。

飲食は上野原のニモカフェさんの軽食とスイーツ。かわいらしいディスプレイが目を引きます。

小道の先にある小さな家の小さな庭の、さらに小道の中に立ち並ぶ2日だけのマーケット。ちょっぴり秘密の匂いのする、楽しくにやにやしてしまう空間です。

こんな人におすすめ

・藤野の暮らしをのぞいてみたい方(会場は自然に囲まれた集落の中にあります)

・いろいろな作品を見たい方(出店者数多い)

・小道に心躍る方(秘密な感じ

3 日連神社

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昨年は、百笑の台所で合同開催した日連神社の会場が今年は復活!新緑の樹々に囲まれた神社の境内は木陰の涼やかさが心地よく、過ごしやすい。新緑の季節のイベントの醍醐味を、どこよりも堪能できる会場です。駐車場は神社の前と、少し離れたお寺にもあり。このお寺の駐車場は、結構空いていて穴場ですよ。

日頃からきれいに掃除されている日連神社の境内は、それだけで心地がよいところ。ですから、ここにきてほっとひと息つくと、いつまででもぼーっとしたくなります。時間の流れが少々緩やかで、各お店をゆっくり見て回っていると、あっというまに時間が過ぎていく。慌てずに2、3周はして吟味したくなるのです。境内という環境にほだされて、蚤の市のように掘り出し物を見つけてやろう、そんな感覚に自然となっていくのかもしれません。

特にこちらは、たくさんの作家さんが出店している大型会場で、バラエティ豊かな作品が楽しめます。また、飲食出店も豊富で、神社の隣には隠れ家的なピザ屋さんも。1カ所じっくり派のみなさんは、ここで長時間過ごしてみるのも楽しいかもしれません。境内には遊具がいくつかあり、子どもたちも遊べます。

 

こんな人におすすめ

・新緑の季節を味わいたい方(地域の人に大切に守られ、木々に囲まれた気持ちのいい境内が最高です)

・いろいろな作品を見たい方(出店者数多い)

・じっくりひとつの会場を堪能したい人(長居したくなる居心地の良さ)

4 藤野芸術の家

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これまでは、建物入口付近に数名の作家さんが出店している、こじんまりした印象だった会場「芸術の家」。2023年は出店者数が一気に増加して、全部で10近いお店が並びました。作家さんは、芸術の家と縁のある、県内を中心とした各地の方々。作風もバラエティ豊かで、ひとまわりしたら、なにかしらピンとくる作品に出会えそうです。

これまでは飲食の出店がありませんでしたが、今年は併設されているレストラン「あやの」が、お弁当の販売をしていました。ゆっくり食事がしたければレストランで食べてもよし、いろいろな会場でいろいろなフードを食べたい、あまり時間がないのでサッと食べたい、という人はテイクアウトを利用するのもよし。芝生があるので、天気が良ければそちらでピクニックのように食べるのも楽しいかもしれません。

芸術の家は、駐車場もたっぷりあるので安心。陶器市とは直接関係ありませんが、建物内には体験工房があり、陶芸や木工体験が気軽に楽しめるので、小さなお子さんがいる方にはおすすめです。また、リーズナブルに泊まれる宿泊施設でもあります。陶器市を2日間かけて回りたいという人は、こちらに泊まっておくと玄関を出た瞬間から陶器市が楽しめます(週末の予約はすぐ埋まってしまうのでご注意を)。

 

こんな人におすすめ

・小さなお子さんがいる方(体験工房あり)

・いろいろな作品を見たい方(出店者数多い)

・泊まりで陶器市を楽しみたい方(宿泊施設と同じ敷地にある会場です)

5 百笑の台所

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おいしい本格韓国料理が食べられる絶景レストラン「百笑の台所」。毎週末、大勢の観光客で賑わう人気のレストランですが、陶器市ではオーナーの陶器コレクションの展示を行なっています。藤野にいる(または、いた)作家さんの作品を中心に、ズラリと貴重な作品が並びます。一部、販売されている陶器もありますが、作家さんが出店しての陶器の販売はないので、その点はご注意ください。同じ敷地内にグランピング施設を構える日比谷花壇がドライフラワーや系列カフェのドーナツの販売をしています。また、レストラン奥にあるギャラリースペースでは、今年は写真展が開催されていました。陶器に限らず、彫刻や絵画など、さまざまなコレクションが展示されており、アートが好きな人は楽しめる空間です。

そして、なんといっても料理です。11時過ぎから早くもお客さんが入り始めて、12時前には席がかなり埋まった状態に。毎年、大変混み合い、売り切れとなることもあるので、待たずに確実に食べたい方は早めの来店がおすすめです。また今年は、テイクアウトできる軽食やスイーツも販売していました。レストランが混み合っているようなら、こうした軽食を購入して道々食べるのも楽しいのではないでしょうか。

 

こんな人におすすめ

・アートが好きな方(展示されているアート作品多々あり)

・山の絶景を楽しみたい方(絶景)

・おいしいごはんを食べたい方(本格韓国料理レストラン)

6 しぜんと遊ぶ

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百笑の台所の駐車場脇の道を上がっていき、山のてっぺんにあるのが、クラフト作家さとうますよさんの工房「自然とあそぶ」です。こちらの会場、歩いて坂を上がってくると、知らない人は「え、ほんとにこの先に会場あるの?」と不安になったりするみたいです。ご安心を。坂を上りきれば住宅がいくつも建っています。

山のてっぺん、広々としたお庭では、うそまことさんのけん玉ワークショップが常時開催!前の道路は交通量が少なく、小さなすべり台があったりと、子どもが遊ぶのに最高の環境です。パン屋さんのパンにキッチンカーも並び、大人もまったり。ゆっくりのんびり時が流れます。

出店は庭に1名、あとは建物の中。3つのスペースに、数名ずつの作家さんの作品が並べられています。室内だと、作家さんとの距離も近く、自然と会話が弾みます。子どもたちがうそまことさんのワークショップで遊んでいる間、ゆっくり買い物できるのも嬉しいポイント。タイミングが合えば、ライブも観られるかもしれません。いってみるとわかりますが、とっても居心地がよく、どこかに移動する気がなくなります(笑)。たくさんの会場を回るより、ひとつの会場をじっくり楽しみたい人におすすめです。

 

こんな人におすすめ

・小さなお子さんがいる人(子どもは遊び、大人は買い物)

・ゆったりひとつの会場を楽しみたい人(居心地がよく、長居したくなる空間です。フードも充実!)

・作家さんとゆっくりお話がしたい人(室内展示多めで距離近し)

7 高橋安子アトリエ

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駐車場のある篠原の里から細い路地に入り、坂を登っていくと、平坦になったところで日差しを燦々に浴びた陶器市の看板が目に入ります。陶人形作家・高橋安子さんのアトリエです。日当たりがよく、風が気持ちよく吹き抜けるテラスでは、安子さんの旦那さまで造形作家の高橋政行さんが接客を。居心地のよさと政行さんの軽快なトークに思わず長居してしまう人続出。まるでサロンのような雰囲気があり、のんびりと過ごすことができます。高台にあるので、もともとはテラスからの景色がよかったと記憶しているのですが、どうやら年々木が大きくなって、なんと今年は、景色が見えなくなっていたりも(笑)。

テラスでは、娘さんのパン屋さん「スロウパン」の販売もあり。ただし、大人気につき、例年初日で完売してしまいます。今年は焼き菓子のみは2日目用にとっておいてくれていましたが、確実に手に入れたい人は初日午前中に行くことをオススメします。

建物の中では安子さんの陶人形とAiko pooleさんのイラストの展示販売が行われていました。今にも動き出しそうな、かわいらしい安子さんの陶人形は、みているだけで想像力が掻き立てられ、楽しくなってきます。ファンの方も多く、少しずつ買って揃えているのだという方も。そして、やはりみんながざわめくのが、前回も好評だった木の実を模した作品。ずらりと並んだ陶製の木の実の中には、実は本物の木の実も混じっています。どれが本物でどれが陶製か。お客さん同士で答え合わせに花が咲いていました。

 

こんな人におすすめ

・作家さんのアトリエをのぞいてみたい方(オープンハウスの会場です)

・作家さんとゆっくりお話がしたい人(作家さんとの距離が近く、ゆっくりお話できます)

・お散歩好きな人(篠原地区は4会場あり。歩いて巡るのが楽しいです)

3 keramos​+

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篠原の里(旧篠原小)の校庭を会場に開催される「keramos」。出店者数が多く、今回の最大規模の会場といっていいでしょう。駐車場が目の前で会場も広く、飲食の出店が多いことから、多くの人が訪れ、長居する会場となっています。篠原地区には全部で4つの会場がありますが、keramos以外は飲食の出店がほぼないため、篠原地区に腰を据えて巡る人は、必然的にkeramosでランチをとることになります。

校庭に円を描くようにたくさんのお店が並んでいます。入り口付近から順々にぐるりと回って見ていくと、それだけでも時間がかかりますし、あれもこれもと迷っているうちに2周も3周もしてしまいます。毎年必ず出店している作家さんがほとんどなので、その作家さんの作品目当てで来ている方もいます。

篠原の里にあるのびるっこ保育園のフリマも開催されていて、子どもがたくさん遊んでいるのも印象的です。元小学校のため、遊具が置いてあったり、道路からは一段上がったところにあったりと、子どもが飛び出す心配もなく、安心して遊ばせることができます。円状に配置されたお店の真ん中にはテーブルやイスもたくさん設置されているので、歩き疲れたら、ちょっとした休憩も可能です。ランチはもちろん、カフェなどのスイーツの販売もあるので、篠原地区巡りの拠点としてうまく活用したいものです。

 

こんな人におすすめ

・小さなお子さんがいる人(元小学校につき、安心して遊ばせられる環境です)

・おいしいごはんが食べたい人(飲食店多し。がっつりランチからスイーツ、軽食まで)

・いろいろな作品を見たい方(出店者数多い)

9 釜戸の上

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篠原の里から牧馬方面にてくてく数分。広い庭とテラスを開放した「釜戸の上(かまんどのうえ)」。陶芸家・西村まゆみさんとナオコラヴさん、家主であり、木工作家の長崎克央さんの作品の展示販売が行なわれています。

釜戸の上は、表からはまったくわからないのですが、すぐ裏に篠原川が流れています。敷地の奥に入っていくと、水の音が聞こえてくる。それが心地よく、幾分か涼しさも感じられます。河原まで降りることのできる長崎さんお手製のハシゴもあり、水量が増えていなければ、プライベートビーチならぬプライベート河原も楽しめます。このほか、東屋やギャラリースペース、オリジナルデザインのイスなど、なんだか気になるポイントがいっぱい。あっちもこっちもと覗きつつ、近所の家にふらりと遊びにきてお茶しているようなまったり感もある、不思議な魅力をもった空間でした。長崎さんは、地元産材の無垢板を多数所有していて、材の販売も行なっていました。おもいのほか興味を持つ人がたくさんいることに驚きました。

ちょうど流し(?)のバンドToy Box Caravanの演奏が始まったところに遭遇しました。テラスをステージに、背景には新緑の森。踊っている人もいれば、座ってのんびり観ている人もいて、みんなが思い思いにライブを楽しんでいるのが印象的でした。

 

こんな人におすすめ

・藤野の暮らしをのぞいてみたい方(古民家リフォームに小屋DIY)

・距離感の近さを楽しみたい方(居心地がいいのに密度が濃い)

・自然とアートを堪能したい方(空間そのものが楽しめる)

3 陶釉舎

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篠原地区のいちばん外れ。ゆるい上り坂を少々息を上げながら歩いていくと、民家が途切れる最後のところにあるのが陶釉舎です。篠原の里の駐車場から歩くと15分ほど。新緑の山々とのどかな里山を眺めながらお散歩するにはちょうどよい距離だとは思いますが、なにせずっと上り坂。歩くのがしんどいなという方はシャトルバスを利用するという裏技も。シャトルバスの終点は陶釉舎前。陶釉舎前で降りて、そこから篠原の里方向に向かうと、ずっと下りなので、同じ距離でも歩くのはずいぶん楽かと思います。

陶釉舎は、海と山の交流をコンセプトにしていて、今年も湘南方面の作家さんをメインに、たくさんの作家さんが出店していました。建物内にも、陶釉舎の碓井直弘さん、吹田千明さんの作品をはじめ、さまざまな作品の展示販売が。特に碓井さんと絵本作家の西村繁男さんがコラボした陶作品はたくさんの人の注目を集めていました。

実は陶器市は、この陶釉舎を舞台に行なったのが始まりだったとか。いわば、陶器市の原点的な場所です。木漏れ日が指す広いテラスはあちこちでおしゃべりに花が咲いています。出店者数が多く、それでいて、ぎゅっとコンパクトにまとまっているせいか、どこよりも賑やかで活気があるのです。この場にいるだけでなんだかワクワクしてしまう。

今年、筆者は2日目の最後に訪問させてもらいましたが、朝一番はもっと活気があって楽しいのではないか。ふと、そんな気がしました。

 

こんな人におすすめ

・陶器市の原点を訪れてみたい方(ここで夜通し宴会していたそうですよ)

・人との出会いを楽しみたい方(常にたくさんの人がいて、話に花が咲きます)

・いろいろな作品を見たい方(出店者数多い)

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